今回は、30代男性・会社員の方が自転車を運転中に交通事故に遭い、後遺障害10級が認定された事案についてご紹介します。
最終的に、約4140万円という金額で示談解決することができました。
本件では、事故状況を詳しく確認するために刑事記録を取り寄せたところ、被害者側にとって不利となる事情が判明しました。
そのため、単純に訴訟に移行するのではなく、訴訟となった場合のリスクを踏まえたうえで、示談交渉によってできる限り高い賠償額を確保することを目指しました。
1 今回の交通事故の内容
30代男性・会社員の方が自転車で直進中に事故
被害者の方は、30代の会社員男性です。
自転車で道路を直進していたところ、一時停止規制のある道路から出てきた自動車と衝突し、負傷しました。
その結果、後遺障害が残り、後遺障害10級が認定されました。
2 自転車事故の過失割合について
基本的な過失割合は「自転車10%:自動車90%」
本件の事故類型では、基本的な過失割合として、
自転車10%:自動車90%
とされる類型でした。
そこで、被害者側にさらに有利な事情がないかを確認するため、刑事記録を取り寄せて事故状況を詳しく確認しました。
刑事記録から、被害者側に不利な事情が判明
ところが、刑事記録を確認したところ、被害者側にとって有利な事情だけではなく、むしろ不利となる可能性がある事情が判明しました。
相手方車両が事故前に一時停止していたことをうかがわせる事情が確認されたのです。
この事情を踏まえると、訴訟になった場合には、自転車側の過失が10%加算され、
自転車20%:自動車80%
と判断される可能性が高い状況でした。
3 訴訟ではなく、示談による早期解決を目指す
訴訟に移行すると過失割合が争点となる可能性
本件では、保険会社の担当者レベルでは、刑事記録から判明した上記の事情が十分に把握されていない状況でした。
そのため、交渉を長引かせて相手方が顧問弁護士等に相談することになれば、この事情を指摘され、過失割合について厳しい主張をされる可能性がありました。
また、訴訟となれば、事故状況について刑事記録等を踏まえて詳細に検討されるため、自転車側の過失が20%と判断されるリスクも無視できませんでした。
「訴訟をすれば必ず有利になる」とは限らない
交通事故の損害賠償では、訴訟に移行すれば必ず賠償額が増えるというわけではありません。
訴訟をすることで、これまで相手方が十分に把握していなかった事情が改めて検討され、結果として被害者側に不利な判断がされることもあります。
本件では、
- 過失割合について被害者側の過失が10%加算される可能性
- 事故後の年収が減少していないことによる逸失利益の減額リスク
がありました。
そこで、これらのリスクを考慮しながら、できる限り高い金額を示談交渉で確保して、早期に解決することを目指しました。
4 最終的に約4140万円で示談解決
傷害慰謝料:約123万円
傷害慰謝料については、いわゆる赤い本の基準を前提として交渉し、約123万円、裁判基準の100%の金額を確保することができました。
後遺障害慰謝料:550万円
後遺障害10級について、後遺障害慰謝料550万円、赤い本の基準の100%を認めてもらうことができました。
後遺障害逸失利益:約3900万円
本件で大きな金額となったのが、後遺障害逸失利益です。
事故後の年収については減少がみられなかったため、訴訟となった場合には、逸失利益について一定の減額がされる可能性がありました。
その点も踏まえて交渉した結果、約3900万円の後遺障害逸失利益を確保することができました。
最終的な解決金額は約4140万円
休業損害約63万円、傷害慰謝料約123万円、後遺障害慰謝料550万円、後遺障害逸失利益約3900万円のほか、その他の費用や既払い金額を調整した結果、
最終的な解決金額は約4140万円
となりました。
5 本件で訴訟を選択する場合の主なリスク
① 過失割合が10%加算される可能性
刑事記録から、相手方車両が一時停止していた事情が確認されたため、訴訟では自転車側の過失が10%加算される可能性が高い状況でした。
約4000万円という高額な賠償額となる本件では、過失割合が10%変わることによって、最終的な受取額にも大きな影響が生じます。
② 逸失利益が減額される可能性
また、事故後の年収に減少がみられなかったことから、訴訟では後遺障害による実際の収入への影響が争点となり、逸失利益について一定の減額がされる可能性もありました。
こうした事情を踏まえ、訴訟で争うことによるリスクと、示談によって早期に解決するメリットを比較して交渉を進めました。
6 訴訟リスクを踏まえた示談交渉
慰謝料は裁判基準100%を確保
本件では、訴訟となった場合のリスクを考慮しながらも、安易に賠償額を妥協するのではなく、慰謝料については裁判基準を前提として交渉しました。
その結果、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料のいずれについても、赤い本の基準100%の金額を確保することができました。
逸失利益についても高額な金額を確保
さらに、後遺障害逸失利益についても、訴訟となった場合に認められる可能性がある金額を見据えて交渉を行いました。
結果として、約3900万円という高額な逸失利益を確保することができました。
7 交通事故では「訴訟をするかどうか」の判断も重要
交通事故の損害賠償では、損害額を計算して請求するだけでは十分ではありません。
訴訟に移行した場合に、どのような事情が新たに問題となるのか、過失割合や損害額についてどのようなリスクがあるのかを検討したうえで、示談交渉を進める必要があります。
本件では、刑事記録を取り寄せたことで、被害者側にとって不利となる可能性のある事情が判明しました。
しかし、その事情を踏まえて訴訟となった場合のリスクを分析し、早期に示談を成立させる方向で交渉した結果、
約4140万円
という金額で解決することができました。
交通事故の示談交渉では、単に「裁判基準でいくらになるか」だけを見るのではなく、実際に訴訟をした場合のリスクまで考慮して交渉方針を決めることが重要です。
長年にわたって交通事故の示談交渉や訴訟を数多く担当してきた経験を生かし、本件でも事案のリスクを見極めたうえで、早期かつ高額な示談解決につなげることができました。


