今回は、東京弁護士会所属の弁護士・中里が担当した、50代男性・郵便局員の方の交通事故案件についてご紹介いたします。
信号無視車両との衝突事故で、右手関節に重い後遺障害が残った事案ですが、最終的に約3000万円で示談解決に至りました。
1 被害者の方について
- 50代男性
- 職業:郵便局員
2 事故態様と過失割合
被害者の方がバイクを運転して直進していたところ、相手方車両が信号無視をして進入し、衝突した事故です。
過失割合は、
- 被害者側 0%
- 相手方側 100%
となりました。
典型的な信号無視事故であり、被害者側に過失は認められませんでした。
3 後遺障害について
本件では、右手関節の可動域制限について、後遺障害等級10級10号が認定されました。
郵便局員の方の場合、バイクの運転や郵便物の積み下ろし、荷物の取り扱いなど、手関節を日常的に使用する場面が多く、後遺障害による労働能力への影響が問題となる事案でした。
なお、後遺障害申請については、「事前認定」の方法を選択しました。
被害者請求を行った方が有利になる事情が特段なかったためです。
「被害者請求でないと適切な等級が認定されない」
と一概にいえるわけではありません。
実際には、症状の内容、医証の状況、保険会社対応などを踏まえ、担当弁護士が慎重に判断することが重要です。
4 示談交渉の結果
本件では、最終的に約3000万円で示談解決に至りました。
主な内訳は以下のとおりです。
⑴ 休業損害:約190万円
受傷による休業期間について、収入資料等を踏まえて適切に請求を行いました。
⑵ 傷害慰謝料:240万円
いわゆる赤い本基準(赤本Ⅰ基準)のおおむね95%程度での解決となりました。
本来であれば、赤本基準100%での解決を目指してさらに交渉を継続する選択肢もありました。
しかし、本件では、後遺障害逸失利益について、当初の想定を大きく上回る有利な回答を保険会社から得ることができていました。
そのため、あえて傷害慰謝料部分で強硬な追加交渉は行わず、全体として有利な条件を維持したまま早期解決を図る判断を行いました。
交通事故の示談交渉では、個別項目だけでなく、「全体としてどこでまとめるか」という視点も非常に重要になります。
⑶ 後遺障害慰謝料:550万円
後遺障害等級10級として、赤本基準100%での解決となりました。
⑷ 後遺障害逸失利益:約2090万円
- 労働能力喪失率:27%(10級)
- 労働能力喪失期間:14年(平均余命の2分の1)
という内容で解決しました。
また、本件では、60歳以降の年収については逓減計算がされました。
この点は、裁判になった場合でも通常問題となるポイントです。
もっとも、逓減を前提としても、当職が訴訟基準を前提に想定していた金額を上回る回答内容であり、非常に良好な条件で示談することができました。
⑸ 最終解決額:3000万円
その他の損害項目や既払い金等を調整したうえで、最終的な示談金額は3000万円となりました。
当初の見込みとしては、
- 約2000万円~2600万円程度
で解決できれば十分に悪くない事案と考えていました。
しかし、最終的には保険会社側も大きく歩み寄り、結果として非常に良い条件での解決となりました。
5 まとめ
交通事故案件では、
- 後遺障害等級
- 労働能力への影響
- 職業特性
- 示談交渉の落としどころ
によって、最終的な賠償額が大きく変わります。
特に、後遺障害逸失利益については、被害者の仕事内容や実際の支障状況を具体的に主張・立証できるかが重要です。
交通事故で後遺障害が残ってしまった場合には、早い段階で交通事故案件に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。


